日本人は寝酒に頼っている人が実に多いのです。
成人男性の40%が、寝る前にお酒を飲んでいます。「寝つきがよくなるから」というのが最も多い理由です。
確かに、お酒を飲むと寝つきがよくなります。
でも、眠りの質は悪くなります。
寝酒は、睡眠不足や不眠の原因になるのです。
アルコールを飲むと眠りが浅くなる?その2つの原因とは?
アルコールが寝つきをよくする理由
アルコールを飲むと、寝つきがよくなります。この経験があるから、寝酒をするという人も多いでしょう。中には、寝つきをよくするために寝酒が習慣になり、お酒に心理的に依存するようになって、「お酒を飲まないと眠れない」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか?
お酒を飲むと、急激に体温が上がり、その後急激に体温が下がります。
この急激な体温の下降が眠りを誘うのです。
アルコールがもたらす眠気は、確かに寝つきを良くしてくれます。
しかし、睡眠の質はとても悪くなり、起床時のだるさや、睡眠不足を感じるようになります。
アルコールが招く脳の酸素不足
睡眠中は、脳が酸素不足になることがあります。
アルコールを飲んでいなくても、入眠後の深い眠りの時間帯には酸素不足になりやすくなります。
しかし、アルコールを飲むと、この酸素不足の状態がさらにひどくなります。ビールを中ジョッキ1杯飲んだだけでも、お酒を飲まない状態と比べて低酸素状態がひどくなり、頻度が多くなります。
SpO2という数値があります。血液中に酸素がどれくらい含まれているかという値です。健康な人であれば、通常は98%程度のSpO2がありますが、お酒を飲まない状態での睡眠で、90%程度まで下がることがあります。それは、入眠後2~3時間後の、深い眠りに入った時に限られます。
ビールを中ジョッキ1杯飲んだ後で眠ると、SpO2はひどい時で一時的に70%まで下がることもあります。中ジョッキ1杯程度であれば1~2回程度ですが、さらに飲酒量が増えると、睡眠の間中70%~80%のSpO2の状態が繰り返し現れます。
この低酸素状態の原因は、「無呼吸」です。
アルコールを飲んで眠ると、鼻から喉にかけての空気の通り道である上気道の周辺の筋肉が緩んで、上気道が狭くなってしまうのです。
アルコールの量が多いほど、筋肉の緩みはひどくなり、無呼吸の時間が多くなるのです。
無呼吸の時間が増えると脳に十分に酸素が送られず、脳の疲労が回復せずに眠気が残ってしまうのです。
アルコールが招く中途覚醒
アルコールを飲むと気分がよくなりますが、翌日ひどい二日酔いに悩まされたことがあると思います。この二日酔いの原因は、肝臓でアルコールが分解されるときにできるアセドアルデヒドという毒素です。
寝酒をして眠ると、入眠後3時間ほどで体内にアセドアルデヒドができます。
アセドアルデヒドは交感神経を興奮させます。交感神経というのは、人間の内臓や神経活動を活発にします。交感神経が興奮すると、眠りが浅くなり、夜中に目覚めてしまって再び眠ることが難しくなってしまいます。
夜中に目が覚めることを、「中途覚醒」といいます
まとめ
アルコールは、体温を急激に下げることによって寝つきをよくします。
しかし、アルコールで筋肉が緩むことで上気道の筋肉も緩み、空気の通り道がふさがれて無呼吸の状態が起こります。無呼吸の状態では脳に十分な酸素が送られず、脳の疲れが回復しなくなってしまいます。
そのうえ、睡眠中にアルコールの分解が進みアセドアルデヒドが発生すると、交感神経が興奮して中途覚醒が起こってしまします。
無呼吸や中途覚醒によって眠りの質が悪くなり、睡眠不足の状態になると、もっとよく眠ろうとしてお酒をたくさん飲む人もいます。そうすると、さらに眠りの質が悪くなるといった負のスパイラルが起こるのです。
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